
朝から片耳が詰まる、その聞こえにくさは早めに相談してよいサインです
朝から右耳が詰まったようで、電話の声が遠く感じる。耳鳴りもあるけれど、疲れのせいかもしれない。そう思いながら、仕事や家族の予定を前に受診を迷う方は多くいらっしゃいます。片耳の急な聞こえにくさは、突発性難聴のように早めの対応が望まれる場合もあれば、耳垢など別の原因による場合もあります。どちらなのかは、感覚だけでは区別がつきにくいものです。この記事では、相談を急ぎたいサインと、耳鼻咽喉科での検査や治療の流れを整理します。迷ったときは、数日待つより早めの相談を選んでください。
この記事の要点まとめ
- 片耳の聞こえにくさや耳詰まり、耳鳴りが急に現れたら、自己判断せず早めに耳鼻咽喉科へ相談します。
- 診察では耳の観察や聴力検査で原因を調べ、突発性難聴の場合は症状や持病に応じて治療を検討します。
- 治療中は再検査で経過を確認し、薬や飲酒は医師に相談します。しびれや言葉の出にくさがあれば救急相談を検討します。
目次
片耳の急な聞こえにくさを放置せず、いつ受診する?

片耳の聞こえが急に変わったら、数日様子を見るより、気づいた当日から耳鼻咽喉科へ相談することをおすすめします。突発性難聴を含め、原因の区別は診察を受けなければつきにくいからです。
耳が詰まる、耳鳴りがする――聞こえの急な変化を見逃さない
突発性難聴は、ある時点を境に耳が聞こえにくくなる病気で、多くは片側に起こります。内耳や聞こえの神経の働きによる難聴(感音難聴)のひとつです。
気づき方は人によってさまざまです。
- 電話の相手の声がこもる、片側だけ遠く感じる
- 耳に水が入ったような詰まった感じが続く
- キーン、ジーという耳鳴りが急に始まった
- 自分の声が耳の中で響く
めまいやふらつきを伴うこともありますが、耳鳴りやめまいがなくても相談の対象です。聞こえにくくなった日時と、その後強くなったか変わらないかをスマートフォンにメモしておくと、診察で経過を伝えやすくなります。
「耳垢か疲れだろう」と決めつけられない理由
耳の詰まりは、耳垢がたまったときや中耳炎、耳管(耳と鼻の奥をつなぐ管)の働きが乱れたときにも起こります。原因によって必要な対応はまったく異なるのに、自覚症状だけで見分けるのは簡単ではありません。耳の中の観察と聴力検査が、区別の手がかりになります。
気をつけたいのは、自己流の対処で時間が過ぎてしまうことです。綿棒で奥まで掃除をすると耳垢を押し込んだり、耳の皮膚を傷つけたりすることがあります。市販薬で様子を見ているうちに数日がたつケースもあるため、「こんなことで受診してもいいのかな」と感じた段階での相談が、原因を早く確かめる近道です。
数日待つ前に相談したい理由と、回復にみられる個人差
突発性難聴が疑われる場合、聴力の経過には個人差があり、治療については診察結果を踏まえて医師が判断します。だからこそ、急な変化に気づいたら当日中を含め、できるだけ早く耳鼻咽喉科へ連絡するのがひとつの目安です。
とはいえ、「何日を過ぎたら聞こえが戻らない」と一律に決まっているわけではありません。経過には年齢や難聴の程度、めまいの有無などが関わり、個人差があります。両耳に起きた場合は、片耳の場合よりステロイド治療後の聴力改善が小さかったとする報告があり、両耳の研究結果を片耳の経過にそのまま当てはめることはできません1。
ポイント
聞こえの急な変化は、日数で区切って待つより「気づいた時点で連絡する」ことを優先しましょう。
夜間・休日に気づいた場合と、救急相談を急ぐ症状
診療時間外に気づいたときは、次の診療日まで漫然と待たず、お住まいの地域の休日・夜間の医療相談窓口や救急医療機関へ相談することも可能です。症状のメモを手元に置いておけば、翌診療日の朝すぐに耳鼻咽喉科へ連絡できます。
次の症状を伴う場合は、耳だけの問題と決めずに救急要請(119番)を検討してください。
- 顔の片側や手足が動かしにくい、しびれる
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- これまでにない強い頭痛がある
強いめまいで立っていられない、吐き気が強く歩けないといったときも、速やかに医療機関へ相談しましょう。
早期受診では何を調べ、どのような治療を考える?

耳鼻咽喉科では、問診・耳の観察・聴力検査を組み合わせて聞こえにくさの原因を確かめ、そのうえで治療の必要性を検討します。突発性難聴と診断された場合は薬による治療が中心になることが多く、方法や期間は症状や持病に応じて医師が判断します。
耳の診察と聴力検査で、聞こえにくさの原因を確かめる
診察は、いつから・どちらの耳で・どんな場面で困っているかを伺うところから始まります。必要に応じてマイクロスコープ(耳の中を拡大して見る顕微鏡)を用いながら、耳垢や鼓膜の状態を確認し、オージオメータによる聴力検査を行います。
聴力検査では、高さの異なる音がどの大きさまで聞こえるかを左右別々に測ります。鼓膜の動きを調べる検査を組み合わせると、中耳炎のような中耳の問題がないかも確認しやすくなります。
当院に限らず、医療機関では検査データをもとに原因を調べ、結果について説明を受けることが、ご自身の状態への理解を深める助けになります。めまいが強いなど追加の検査が必要と考えられる場合は、専門的な医療機関への紹介も検討します。
薬による治療を検討するときに確認したいこと
突発性難聴と診断された場合、ステロイド薬などの治療について医師にご相談ください。使うかどうか、量や期間、効き目の現れ方には個人差があり、難聴の程度や持病を踏まえて医師が判断します。持病や飲んでいる薬によって注意点が変わるため、お薬手帳を持参し、副作用への対応や次回の経過確認の予定も処方の際に確かめておきましょう。
ステロイド薬の使用中に次のような変化が気になる場合は、医師にご相談ください。
- 血糖値の変化(糖尿病のある方は数値についてもご相談ください)
- 胃の不快感や胃の荒れ
- 寝つきが悪くなる、気分が高ぶる・落ち込むなどの変化
- むくみや顔のふくらみ、血圧の変化
- 感染症を疑う症状
気になる症状が出たときは、自己判断で薬をやめずに医師へご相談ください。
海外では高気圧酸素療法(気圧を高めた環境で酸素を吸入する方法)の研究も重ねられていますが、その有効性にはまだ議論があります2。実施できる医療機関も限られ、すべての方に勧められる治療ではありません。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満に高血圧や高血糖などが重なる状態)と突発性難聴の関連を調べた観察研究のまとめもあります3。ただし、関連が示されたことだけで、個人の聞こえの経過を予測できるわけではありません。
ポイント
薬の量や期間、ほかの治療を組み合わせるかどうかは、検査結果と持病を踏まえて医師と相談しながら決めていきます。
治療中の過ごし方と、聞こえや耳鳴りが残った場合の相談
治療中は、処方された薬を自己判断でやめたり減らしたりしないことが基本です。薬の種類によっては急な中止で体調に影響が出ることもあるため、気になる変化があればまず医師に相談してください。
飲酒の可否は、薬との組み合わせや持病で判断が変わります。診察時に確認しておけば、帰宅後に迷わずに済みます。鍼治療などを考えている場合も、通院中であれば事前に主治医へ伝えておきましょう。
経過は、聴力検査を繰り返して数値で確かめます。自覚症状だけでは変化がわかりにくいため、予定された再検査を受けることが、今後の方針を考える材料になります。聞こえにくさや耳鳴りが残った場合も、電話を聞こえる側の耳で受ける、会議では話し手の近くに座るといった工夫のほか、補聴器の相談など次の選択肢を一緒に考えることができます。
受診時に耳鼻咽喉科で何を伝える?
受診の際は、次の点をメモにまとめておくと診察がスムーズです。
- 聞こえにくくなった日時と、そのとき何をしていたか
- 左右どちらの耳か、両耳か
- 耳鳴り・めまい・吐き気の有無
- 電話の聞き返しなど、仕事や生活で困っている場面
- 持病と服用中の薬(お薬手帳)
電話対応の多い仕事や家族の通院付き添いがあると、予定を動かすことにためらいが出るかもしれません。それでも、聞こえの急な変化は早く原因を確かめるほど検討できる対応が広がると考えられています。まずは連絡を入れて、相談の時間を確保しましょう。
加古川あわづ耳鼻咽喉科はJR加古川駅南口から徒歩約6分の場所にあり、専用駐車場もあります。現在の診療時間はアクセスページでご確認のうえ、気になる症状があればお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. 突発性難聴の耳鳴りは治りますか?
A. 耳鳴りの経過には個人差があり、聞こえの変化とともに軽くなる方もいれば、しばらく残る方もいます。症状だけで見通しを決めることはできないため、聴力検査で経過を確かめながら医師と相談していきます。耳鳴りが残って生活に支障がある場合も、対応を一緒に検討できますのでお伝えください。
Q2. 突発性難聴の治療中にアルコールは飲めますか?
A. 処方されている薬の種類や持病によって判断が変わります。自己判断で飲む前に、診察時に医師へ確認してください。
Q3. 耳が詰まった感じは何日で治りますか?
A. 原因によって経過が大きく異なるため、日数で一律に区切ることはできません。耳垢や中耳炎、突発性難聴などは感覚だけでは区別しにくいので、急に詰まった感じが出た場合は数日待たずに耳鼻咽喉科へご相談ください。
Q4. 突発性難聴は薬を飲んでからどれくらいでよくなるの?
A. 薬の効き目の現れ方や経過には個人差があり、「何日で聞こえが戻る」とお約束することはできません。治療中は聴力検査を繰り返して変化を確認し、その結果をもとに医師が今後の方針を判断します。
Q5. 検査や治療の費用はどのくらいかかりますか?
A. 費用は検査や処方の内容、保険の負担割合によって変わり、実際の費用は医療機関によっても異なります。インターネットなどで見かける金額は一般的な相場であり当院の費用ではありませんので、詳しくは受診時に医院へご確認ください。
参考文献
1. Bhat AM, Nanu DP, Nguyen SA, et al. Prognosis of Bilateral Sudden Sensorineural Hearing Loss: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Laryngoscope. 2024. PMID: 38506449. DOI: 10.1002/lary.31404
2. Alter IL, Hamiter M, Han J, et al. Hyperbaric Oxygen and Sudden Sensorineural Hearing Loss: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Laryngoscope. 2026. PMID: 40747804. DOI: 10.1002/lary.32472
3. Lam M, Bao Y, Hua GB, et al. Sudden Sensorineural Hearing Loss and Metabolic Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis. Otology & Neurotology. 2021. PMID: 34325457. DOI: 10.1097/MAO.0000000000003302
2011年 昭和大学横浜市北部病院 初期臨床研修
2013年 昭和大学耳鼻咽喉科頭頸部外科 入局
2013年 昭和大学横浜市北部病院
2017年 山梨赤十字病院
2017年 昭和大学病院
2020年 昭和大学藤が丘病院
2021年 神戸大学耳鼻咽喉科頭頸部外科 入局
2021年 北播磨総合医療センター 医長
2025年 松田耳鼻咽喉科 院長
身体障害者福祉法第15条指定医師
難病指定医









